珍しく電車で海に行ってみる。
1時間半ほどで鵠沼海岸に到着。基本的には車で海に行きたいものの、これはこれで悪くない。ドライバーへの気遣いもいらない。
仕事で少々遅れた私が駅のホームを出ると、そこでは半裸の男三人が私の到着をいまや遅しと待ちうけていた。忠実な友人たち。会話もそこそこに海へ向かう。そうだ、海に来たのだ。
水中メガネを購入しなければ。そして海の家に行けば後はもう言うまでもない。ビール。そう、ビールだ。
ビールはジャンケンで買うものだ。一回負ければ軽く数千円から一万円は飛ぶだろう。しかし勝ちさえすればビールは飲み放題だ。九人はとり憑かれたように拳を振り上げた。何度も、何度も。
海に入らなければ。急にそう思った私は足取りも確かに砂浜に向かう。台風10号の影響はいや増しに増し、波は高い。ライフセーバーの好青年の素敵な笑顔も尻目に高々と空に咆哮を放てばあとは波に立ち向かうだけ。無論大自然の驚異に勝てるはずもなく、無力に押し戻されるだけなのだが、それさえももはや心地よいのだ。
高波とビールは容赦なく身体を蝕む。鉛のように重い四肢にまとわりついた潮をシャワーで洗い流し、海の家を後にしよう。
その頃には陽は落ちかけ、宵闇が訪れる。花火をするには絶好の時間。空に向けて花火を放とう。手持ち花火に目を輝かせる子供よ。ビーチフットボールをする若者よ。あなたたちは海に欠かせないものたちだ。
これだけ疲れてこれだけ飲んだのに、帰りに藤沢駅で降りて居酒屋に行く必要はあったのか?
いやその必要性を考える時間があれば、冷たく冷えたウコン茶割を喉に流し込んだほうがまだ有用というものだ。
夏は海に行かねば。海は考える以上に私たちを待っているのだ。
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