2020/11/08

鼻とゆめ(鼻手術顛末記)

学生の頃から鼻づまり気味でしたが、この十年ほどは
血混じりの鼻水と強烈な片頭痛に悩んでいました。
今年亡くなった父も蓄膿症を患っており、亡くなる遠因となったこともあり、思い切って診察に。

鼻茸(鼻ポリープ)
慢性副鼻腔炎
鼻中隔湾曲症

という診断結果。
これは薬よりも手術をしたほうがよい、ということでトントン拍子で手術の運びとなりました。

まずは手術の前週にCT撮影と血液検査、PCR検査を受けます。
正確な診断がここで出ました。やはり副鼻腔炎で膿がたまっていそうだということ、
そしてその原因が鼻茸だけでなく、鼻中隔という鼻の穴を左右に分けている軟骨の壁が
S字型に曲がってしまっているため通りが悪く、鼻づまりや副鼻腔炎、さらに肩こりや頭痛の
原因となっている可能性が高い、とのこと。

そうですか。
そうだったのですか。
それはぜひ手術しちゃってください。

ということで、

副鼻腔炎手術
鼻中隔矯正術
粘膜下下甲介骨切除術

というものをやってもらうことに。漢字が多い。
日帰り手術とその後の通い診察で対応できるということで、
入院のあまり好きではない私は迷わずゴーを出したのでした。

11月2日(月) 9:30頃手術開始。
点滴と心電図電極、血圧計とパルスオキシメーターと装着したら
おもむろに鼻の中に麻酔を打ちまくられます。
結構痛い。しかし3~4発目くらいから痛みは感じなくなってきます。効きが早いですね。
ただ麻酔が効くと同時に、猛烈に心臓の動悸が激しくなります。これは少し怖い。
まして私は血圧高いので緊張しますが、
「リラックスしてください」
そうでしょう。わかりますがんばります。

ここから
「口呼吸だけしてください」
という注文。それはそうでしょうわかりました。

しかし今のご時世は新コロナ。マスクをずらして鼻だけ出して手術するのですが、
口呼吸を激しくしていると口にマスクが貼りついて苦しい。
この後何度も「すいません口のマスクの間に間隔を作ってください…」とうめくことになります。

何かはじまりました。どうやら鼻の中を切ったりはさんだり削ったりしているような気配。
と、しばらくすると
「強い振動来ますよー」
と言われ、思い切り鼻を中心に頭に衝撃が。
なるほど。怖くて目はつぶっていましたが鼻にノミを入れてハンマーで叩いているのですね。
鼻の中の軟骨を削っているそうです。
「今削っているからね。まっすぐにできる軟骨はまっすぐにして戻すからね」
ほう。そういうものですか。痛くはないけどこの衝撃もなかなか怖い。
ノミが脳まで刺さる想像しかできません。
しかしひたすら深く深呼吸して心を落ち着けるほかないのです。

あっという間に…という感じではなく、局所麻酔なこともあって結構長く感じます。
ジッとしているのが苦手なので、正直飽きてきました。
しかし当たり前ですが、後戻りはできない。
「休憩したかったら言ってくださいね」
と言われてはいるものの、長引くのも辛いのでここは
「大丈夫です続けてください」
と答えました。実際には
「らいりょうどぅれすつつけれくらさい」
だった記憶がありますが。

ひたすら口呼吸を続けます。しかし完全な口呼吸というのは非常に難しいようです。
時々鼻から何かが喉に流れ込み、むせかえりそうになりますが、ただただ我慢。
口がカラカラに乾いてきてこれまた辛い。

「あと15分くらいで終わりますからね」
「あと10分くらいで終わりますよ」
「あと5分で終わりますからがんばって」
「もう終わりますよ」
と最後のほう励まされましたが、完全にすべて倍くらいかかっていたような気がします。
疲労や麻酔のせいなのか、それとも優しさゆえのサバ読みなのか。

最後に鼻の中に猛烈に何かを詰め込まれる気配が。
鼻の最奥部は麻酔が効いていないので、詰め物が奥に届くとなかなかの激痛が。
私はこんなに何かを強引に入れられたことがないので(注:鼻に)
少し開発されてしまったような気がします。

手術終了。
「これ見てください」
と言って見せられたのがまず削り取った鼻の軟骨。あー何か梅水晶みたいすね。
「そしてこれが右鼻の鼻茸ね」
ほう、とってみると小さいもんですね。
「で、左も鼻茸かと思ったらCTではわからなかったんだけど、こっちは腫瘍でした」
え?腫瘍。
「これね」
でけぇ!2cmくらいのグロい物体。そんなん頭ん中に入ってたんですか。
「悪性じゃなさそうだけど病理に出しときますね」
はい。よろしくお願いします。結果怖いですが…。


「では簡易ベッドで少し休んでください」
ということで移動してベッドで休憩。
ベッドとは言っても血が逆流してはいけないので椅子のようなベッドでした。
私には少し小さいので肩をすぼめて目を閉じます。
休む前に壁の時計を見たら11:00でした。1時間半くらいかかったんですかね。
口が乾きすぎて唇と歯がくっついてしまいました。水をもらいます。
その間にも目からじゃんじゃん涙が出ます。
鼻と目はつながっていると言いますがなるほどという感じ。
横に置いてあるティッシュで涙をぬぐうと、黒いものが。血かな。血ですかね。
鼻はまだ麻酔が効いているものの、目の奥と歯が痛い。衝撃のせいかしら。
30分くらい寝ているとだんだん麻酔が弱まってきて…
キター!鼻に激痛。イテテテイテェ。
痛みにはかなり耐性のあるほうですがこれは痛い。看護師さんに言って痛み止めをもらいます。
15分くらいして少し薬が少し効いてきてやっと落ち着いてきました。

そうするとまた声がかかり手術室に戻ります。
処置はうまくいったとのこと。お土産に切除した鼻茸と削った軟骨をいただきました。
これは捨ててもよいものか聞いたところ「捨てちゃってください」とのこと。そうですか。

この時点では鼻の奥から先まで何かが詰まっています。
血や血漿を吸いとったり化膿しないようにするものがパンパンに入っているようで、
鼻が全体的に膨らんでいるのがわかります。さらに鼻の穴の先端に血と鼻水止めの綿球を詰め、
その上からガーゼをテープでとめます。どうやらしばらくは血が出るよう。

2日後に詰めてるものを交換、4日後に詰めてるものを除去とのこと。
「少し休んでいきますか?」
と聞かれましたが、痛い上に麻酔まだほんのり残っているものの、
意識と首から下はしっかりしてたので帰ることに。
「帰ってゴロゴロします」
と答えて、お金払って病院を後にしました。
電車に乗って帰宅。

電車までは大丈夫でしたが、最後歩いたせいか家に着いたら左の鼻から出血しまくってました。
新しくもらったマスクにも染みてたので道ですれ違った人は怖かったかも。ごめんなさい。


そこからはひたすら安静に。
一日三回抗生物質を飲み、6時間に1回鎮痛剤を飲み、
綿球とガーゼが血や血漿で汚れたら交換する日々。

これまで知らなかったことがたくさんわかりました。

・両鼻がふさがっているとあまり難しい考え事ができない。
 =仕事はかなりきつい。

・口を開けて寝る習慣がないので、口呼吸しかできないと寝れない。
 =口を閉じてしまい呼吸が止まりびっくりして起きる。
 =口の中がカラカラになり喉と歯と舌の根が痛い
 =結果長くて30分~1時間程度の短い睡眠を繰り返すことになり疲れる。

・食事がまともに摂れなくなる。
 =咀嚼中に呼吸ができないので、冷たい食べ物でもハフハフ言いながら食べることに。
 =嚥下する際に鼻に負担がかかり痛みと出血。
 =大きな口をあけると鼻に負担がかかるので、基本小さく切るか汁もの。
 =いろいろ面倒になり小食になる。

・顔が洗えない。
 =体はぬるいシャワーならOKですが、少し寒くなってきたので結構辛い。
 =顔はあつしぼで拭くのみ。

・最初の2日くらいは結構出血する
 =綿休とガーゼの交換に追われる毎日。

なかなか大変です。出血は3日目くらいにはかなり弱まるのでよいですが、
それ以外は5日間ずっと続きます。特に5日うまく寝れないのがきついですね。
入院したほうがよかったのかとも思いましたが、
医者に聞いたところこれらはすべて入院しても同じなので後は好みとのこと。
私は病院よりはリラックスできる自宅でよかったかもしれません。


特に体調に大きな問題は出なかったので、予定通り3日目に詰め物の交換をしました。
実は今回の5日間で、この3日目の詰め物交換が一番痛かったです。
麻酔はもちろんなく(事前に痛み止めは飲んでいたものの)傷だらけの鼻から
大量の詰め物を取り出し、再び詰めるので、考えてみれば確かに痛い。
さすがの私もちょっと声が出てしまいました。
詰まってるから麻酔打てないしどうしようもないのはわかるんですけどね…。
詰め物は最初より少し減った感じ。パンパンに膨らんでた鼻も少し落ち着き気味です。

変わらず眠れず食べれない3~4日目を過ごし、5日目に詰め物の除去することに。
このころになると出血はほとんどなく、少し鼻水に血が混じる程度です。
詰め物を抜くときは…ああ、ちょっと痛い!でも一昨日より100倍マシ!
というわけでまる4日間私の鼻腔を守ってくれていた詰め物は去り、
ついに私に鼻呼吸が戻ってきたというわけです。

最初は怖くておっかなびっくりの鼻呼吸でしたが、病院を出るころには何とか普通に鼻呼吸。
しかしトイレに行ったら鼻血が少し出たのであわてて予備のコットンを鼻に詰め、
マスクを交換して一路帰宅しました。ビビった。


これが私の鼻手術の顛末記です。いかがですか。参考になりましたか。
費用は全部で15万円ほどです。結構かかりますね。そこそこいいベースが買えます。
ただ保険診療で高額医療費の対象となりますので
ご加入の健康保険やご収入にもよるでしょうが自己負担限度額を超えたら一部戻ってきます。
私は入院保険でカバーします。日帰り手術も対象の保険にしていてよかったですね。

現在術後、6日目となりました。
まだ少し入浴時など鼻血が出ることがありますが、
ダラダラと出るわけではなく鼻水に血が混じっている感じです。
鼻の粘膜が修復されていっているんだなぁという印象で、後は自分の体の回復力を信じるばかりです。
昨日本当に久々に熟睡できました。鼻呼吸さまさまですね。

鼻腔が真っ直ぐになったことによる効果はまだ分かりません。
とりあえず鼻通りがよくなって、鼻の奥が寒い、くらいでしょうか…。
また気がついたことがあればまとめてみたいと思います。