……やッ……ご存知フクロムシっているじゃないですか。
……ハハア……なるほどご存知でない。イヤそうですそうです例のカニとかエビとかに寄生する…
分類的にはフジツボの仲間らしいのですが。あれがですねトテモ怖いのです。
……イヤどうも……御免下さい。どうも胸が一パイになりまして……ハハイ……ハハイ……。
フジツボの仲間というだけアッテ孵化するとノープリウス幼生そしてキプリス幼生として
海の中を泳ぎまわっているわけですが、雌のキプリス幼生がいったん宿主……そうですそうです
カニとかエビとか……ヤドカリなんて場合もあるんですが……に付着するとケントロゴンなる
形態に変化して針を刺して細胞を侵入させるのです。
ハイ……そうやって体内に忍び込んでは蠕虫状のバーミゴン幼生とやらになるのですが、
このバーミゴン幼生はソレからインテルナ……ええええインテルナは植物の根のようなもので
細い枝状の器官をカニの全身の神経節に張り巡らせて、栄養分を頂戴しながら
ついには体外……つまりはカニの腹にあの袋状の外套……エキステルナというのですが、
アレを露出させるにいたるのです……ハハイ……ハイ。ええええ。事実ですとも事実ですとも……。
……カニがこれはイケナイ……と気づいたときにはもう遅く、コウナッテしまうとカニは
生殖能力を失ってしまいます……ホルモンバランスを崩されてしまうのです。
その後カニは腹から飛び出たエキステルナを自分の卵と勘違いして守り続けるのです。
雄のフクロムシのキプリス幼生はその露出したエキステルナに開いた外套口に付着して、
トリコゴンという形態に変態して中に入ります。その後精子をつくる細胞塊に変化して
ひたすら精子を作り続ける……ソウ雌に一体化してしまうのですからこれもマタ不思議なものです……。
但……ここでチョットお断りしておきたいのは、雌のカニはただフクロムシを卵と勘チガイしているだけですが、
フクロムシは雌だけに寄生するわけではない……雄のカニにも寄生してしまう……ハハイ。
信じられないことにフクロムシに寄生された雄のカニは、脱皮を繰り返すごとにダンダンと
ハサミが小さくなり、腹部が広がってツイには見た目も振る舞いも雌のようになってしまうのです。
ムロン生殖能力は失われていて……モウこうなるとエキステルナを自分の卵のように
大事に守ろうとするではありませんか……。
……コンナ怖ろしいフクロムシですが、受精が起こるとエキステルナが発達し、
やがてまた産卵してノープリウス幼生が放出されるのです。
エキステルナは何度か繁殖した後には脱落しますが、
その時にはモウカニは死んでしまいます……栄養もスッカリ抜かれて……。
雌のフクロムシの身体はほとんどが卵巣で出来ていて、ただヒタスラに卵を産み続け、
そして宿主である雌のカニは自分の卵と勘チガイして、そして雄のカニは自分の性別すら勘チガイして、
栄養を抜かれながらも大事に大事に守り続けるのです……。
……エッ……何ですって……。私の話がトンチンカンですって……。
これは怪しからん。どこがトンチンカンですか。
何ですか……これが怖ろしくないとでも言うのですが……ハハハ……。
ああア――ッ。くたびれたアッ……ト……。
ねえアナタ……話し賃に煙草を一本下さいな…………。
……オヤア――ッ。誰も居やがらねえ……。
おかしいな。サッキから一人で饒舌ってたのかな……フーン……イッタイ何を饒舌ってたんだろう……。
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